「離婚しました。もし元夫がそちらに行ったらすみません。何も知らないと言って下さい」
驚くというより「何これ意味わからん」だった。
A子と最後に会ったのは結婚式で、以後はずっと年賀状だけの付き合い。
旦那さんも式と披露宴でしか見てないけど、小太りで頭髪薄い、おとなしい優しそうな人だった。
A子に「どうしたの」と返信したけど返事はないし
電話しても電源切ってる。
夫にA子からのメールを見せて「どうしたんだろうね」と話した十日後くらいに
本当にA子の元旦那が来た。
夜の22時くらいだったかな。夫がドアロック越しに応答してくれた。
夫が私に「来るな」と合図してたから、私はA子元旦那の顔を直接見てないんだけど
夫いわく「目がおかしかった」そうだ。
たぶん年賀状の住所を見てうちまで来たんだと思う。
「A子をかくまっているならあとで困ったことになるんじゃないですか」とか
「隠し事ってよくないですよね。後悔するようなことになるかもしれないね」
とか遠まわしにイヤ~な感じで探って行ったらしい。
でも私たちは本当にA子の情報を何も知らないし、夫が頑として入れなかったら諦めて帰った。
A子元旦那はそれきり来なかった。
さらに数年経ってそんなことも忘れた頃、
A子からメールが来た。元旦那に接見禁止令?が出たとかいう内容。
電話したら今度は出た。
A子元旦那は結婚した途端DV夫に豹変し、でも外面のいい人だったので誰も信じてくれなくて
数年軟禁生活を送ったという壮絶な話だった。
生理が止まったので元旦那に言うと「子供だ!」と元旦那は喜んだそうだ。
(そこは喜ぶんだな、と不思議)
そして産婦人科に診察に行ったら体中の不審な傷がバレて、病院から通報されたらしい。
そこからあれよあれよと引き離されて離婚になった……「らしいよ」と他人事のように言うA子。
なんでかというと当時のことを90%くらい覚えてないとA子は言う。
「記憶喪失だよードラマみたいでしょ」
と冷静に言うA子に唖然とした。
覚えてないから当時の話をしても感情が揺れないんだって。
今は全然縁もゆかりもない土地に引っ越したとかで
「住所教えられないけどごめんね。この電話も近々解約するから」
とのことだった。
こっちがメール二回電話一回、元旦那の来訪一回程度の経験の間に
A子が想像もできない壮絶な体験をしていたことが衝撃だった。
ストレスで生理が止まっただけだったみたいとA子が言ってました。