で、息子の嫁(これがもうめちゃくちゃ可愛いんだ)の父上が、息子と飲まないかと仰ってくれた。
実は結構ガクブルだった。あれ俺珍子もがれるんじゃね?とも思ったりもした。
あちらさん、若くして奥様と離縁なさったとのことで、男手一つで20年以上育ててきたなんて言うからさ。俺も、息子が小さい時に嫁と別れたからそれがどんなに大変なことかちょっとくらいは分かるつもりだ。
そんな愛の結晶、俺の息子みたいな馬鹿な奴にかっさらわれていくなんて、もし俺の立場だったら間違いなく相手の珍子もぎに行く自信がある。
息子の背中叩いて覚悟決めろやと言い聞かせ、飲みに行くことになった。
息子くんのおかげで娘があんなに綺麗になった、なんて嬉しそうに語ってくれるから、俺も調子に乗ったんだよ。
妻に、あんな可愛い子が嫁に来るって見せたい、ってさ。
酒のせいかあちらさんも遠慮なく、多分思いついたままどうして別れたのかと聞いてきた。
ずっと母さんは出かけて帰ってこないんだと聞かせてた息子がじっとこっち見てるのが分かった。
俺は何の抵抗もなく、
ある朝嫁が起きてこなかったこと、
まだ生後間もない息子が泣いてたこと、
俺は何も気にとめないで出勤したこと、
残業して帰ったら家は真っ暗なままで息子が泣き叫んでいたこと、
やっと様子がおかしいことに気づいて救急車を呼んだけど、乗せられていった嫁は帰ってこなかったこと、
いつか帰ってくるかもしれないとか思いながらも、嫁を見た救急隊員たちが首を振ったのをしっかり見ていたことを、
話した。
ひたすら泣いてる息子に、
嫁を大事にしろ、
子供を大事にしろ、
嫁がいなくなるまで赤子の抱き方も知らなかった俺みたいな奴になるな、
と、あとははっきり覚えてない、色々なことを話した。
あちらさんもぐじゃぐじゃに泣いてた。
俺は嫁がいなくなって、毎日毎日嫁を探しに行くことだけ考えた。
息子が幼稚園出たら行こう、小学校出たら行こう、進学できたら行こう、伴侶見つけられたら行こう、と考えてた。
延びに延びて、孫の顔見るまで行けなくなっちまったなあ。
息子たちの式には、俺の嫁の席が用意してくれるとのことだ。
きっと嫁は来るだろう。
そう責めるな 彼は十分後悔してる
仕事だって大切なことだ
誰も責められない