俺「(ないわーw絶対ないわー)」
どう考えてもあり得なかったから、
スタイル抜群で
頭が良くて
収入も多くて
家事が完璧で
美人
な女じゃないと無理!wと言ったら、
嫁「わかりました…」
俺「ホッ」忘れた頃に、すごい美人が告白してきた。
嫁だった。血の滲むような努力をして、俺の出したかぐや姫も真っ青の条件をクリアしたのだ。
暇な人だけ読んでくれ当時俺は大学生。嫁はお菓子や漫画が大好きのマシュマロ(婉曲表現)小学生。
近所に住んでいて、合えば挨拶する程度の中。たまにお菓子をあげたこともあったけど。
俺は決してイケメンというわけではなかったが、ひょろひょろしてて、背も高めだったので、嫁の好みにドンピシャだったらしい。
マシュマロ体型にもかかわらず、当時の嫁の脳内じゃ少女漫画のような甘酸っぱい恋愛が繰り広げられており、無謀にも俺に告白。
俺はロリコンじゃないし、美少女でもなかったからウゲーとなって断る。
悪い子ではないことは確かなんだけど、俺も若かったからとにかくあり得ない!って考えでいっぱいだった。
嫁はちょっと泣きそうになって、わかった、ごめんねお兄さん、と言って終わり。
気まずくなってあんまり話すこともなくなった。
俺が就活するころには一家は引っ越していたようで、コンビニでも通学路でも会うことはなかった。
で、就職が決まって自分も引っ越した。(大学には実家から通ってた)
入社したら覚えることもいっぱいあって、学生時代から付き合っていた彼女と会うことも少なくなって最終的には別れた。ちなみに相手の浮気だったので、しばらく恋はいいかなと思いながら、半ばヤケクソで働いた。
玄関には若い女の靴があった。妹のやつか?と思ったけど、若干妹の趣味じゃないような気がした。
リビングには見たことない女の子。大学生くらいに見えた。
母「おかえり、嫁ちゃん来てるわよ~。すっごく綺麗になっちゃって」
嫁「お久しぶりです」
その声は間違いなくあのマシュマロちゃんだった。しかし、その面影はなかった。体は細いのに、胸はそこそこあって、足もスラリとながい。それ以外は髪も黒いし、シンプルな化粧だったが、それが(元)マシュマロちゃんにぴったりだとおもった。
俺「嫁ちゃん!?うわー久しぶり!大きくなったね、今は大学生?」
嫁「はい。来年就職活動です。」
俺「そっか。ちなみにどこの大学?」
嫁は少し恥ずかしそうに、〇〇大、と答えた。
有名な大学でびっくりした。俺はFランではないが、いい大学ってわけでもなかったから、驚いた。
「へー、すごいねぇ、彼氏はいるの?」
「…好きな人なら、います」
「嫁ちゃんなら大丈夫、きっとOKもらえるよ」
この時俺は、嫁に告られた事を思い出したが、向こうも忘れてるだろうし、そもそもアレは子供の時の恋に恋するみたいな感じだったんだろうと思い、適当に会話してその日は終わった。
4円ありがと
ひとときの休みも終わり、ブラックな会社で働く日々に戻って数ヶ月、俺の体がついに悲鳴をあげた。体が動かなくなり、ベッドから起きあがれなかった。そんな日々が続いて、会社はクビになった。家賃も払えなくなり、実家に戻ることになった。
母「ひとまずは派遣で短時間からでもいいから働いて」
俺「わかった」
俺は派遣社員として働き始めた。時給はちょっと低めだけど、あの会社に比べたら天国のようだった。貯金もあんまりできないけど、そこそこ幸せな日々が続いた。
そんな時、実家に嫁から連絡が入った。
就活が始まるから、先輩としてアドバイスが欲しいとのことだった。
俺は電話越しに一言、体を壊すような会社には入ってはいけない、とだけ言った。
その日は休みだったので、家でのんびりしてたら、また電話が鳴った。嫁だった。
嫁「〇さん、もしかして、具合悪いの?」
俺「え~?大丈夫、大丈夫。」
嫁「…だって、声が疲れてる。」
俺「…言ったでしょ、ブラック企業には就職するなって。俺はブラックに入っちゃったからこうなったんだ。嫁ちゃんが気にすることじゃ嫁「おばさん(母)は?いないんですか?」
俺「いないけど…」
嫁「じゃあ、待っててください。ご飯作りに行くんで。」
数時間後、俺は嫁がキッチンでご飯を作るのを後ろから眺めていた。
ご飯はふつうに美味かった。ご飯を食べながら、あの時嫁にひどいことを言ったのを思い出した。
俺「ねー嫁ちゃん」
嫁「…」
俺「嫁ちゃん、昔俺に告白してきてくれたよね。覚えてないかもだけど」
嫁「……」
俺「あの時さ、酷いこと言っちゃったよね、嫁ちゃんはまだ子供なのにさ、それにとってもいい子なのに、俺」
嫁「やっと思い出してくれた」
俺「へ」
ブスが美人になったところを聞くまではやめさせないぞ。
運動をするようになりました。バランスの良い食事をするようになりました。そしたら料理を作るのが楽しくなりました。どうですか?見違えるようになったでしょ?」
嫁は早口で言って、大きく息を吐いた。
嫁「…あとは、お給料、ですけど。私、就活頑張ります。ブラックな会社に入らないように頑張ります。このこと、覚えておいてくださいね」
この時俺は嫁から詰られるのだと思った。子供時代にひどいことを言われたから、その通りの女になって、俺に仕返しするのだと。
頭の中で、鬼の形相の嫁が『高身長でイケメンで高学歴で家事を手伝ってくれて給料もいい男の人じゃない貴方なんて嫌です』と言っていた。
もちろん妄想なんだけど、この頃まだメンタルが時々弱ったりしてたから、こういう被害妄想をたまにしてしまっていた。
俺「…うん…わかった。」
嫁「はい。忘れないでくださいね。」
その日から嫁は来なくなったし、電話もしなくなった。一応帰り際に連絡先を交換したけど、こちらからもちろん連絡する気にもなれないし、向こうからも連絡はこなかった。
そういえば嫁ちゃんは好きな人がいるって言ってたな、同じ大学の人かな、それともバイト先の人かな、なんてずっと考えてた。
俺なんかとは違う、いい大学のいい企業に勤めるイケメンなんだろうな、って。
ブスってのはデブだったし肌が汚くてそう思ってた肉に目が埋もれてたんだと思うそんな生活をずっと続けていて、季節は冬になった。もう就活もほとんど終わってるころなのに嫁から連絡はこなかった。
嫁が内定もらってない可能性もあったけど、あんまり考えられなかったから、俺のことは忘れて彼氏と遊んでるのかなって思った。
なんて考えてたら嫁から連絡が。
『連絡遅くなってすみません。無事内定貰えました。クリスマス、予定が空いてたら、一緒に食事しませんか?どこも混んでるだろうから、私の家で。』
俺はおめでとう、と返信して、そのあと、彼氏とかと予定はないのか、と聞いた。
そしたら『今はまだ誰とも付き合ってないですから』と返ってきて、今から駅まで迎えに行く、とのことだった。
駅に向かうと、本当に嫁が待っていてくれて、俺を見つけて嬉しそうに笑った。
嫁「来てくれたんですね」
俺「うん」
俺はあーもしかしてコレはアレか。やっぱり仕返しされるのか。と思ったら手を握られて、「行きましょう」と引っ張られる。
アパートの階段を上がって、嫁に引きずられるまま連れていかれる。
玄関で靴を脱ぐことすらできず、嫁に脱がしてもらった。
嫁「ほら、ぼんやりしてないで。一緒にご飯食べましょ。腕によりをかけて作ったんですよ」
俺「うん…」
目のまでに置かれた豪華なクリスマスディナーを見ても、美味しそうだとは思ったが、食欲は湧かなかった。
そんな俺を見て、なにかを察したのか、嫁はこう言った。
嫁「…あの、そんなに私が言ったこと気にしてるんですか。なら、もう済ませちゃいましょうか」
俺「…そうしてくれると嬉しい」
嫁「わかりました。…〇さん、私はあの頃から、自分でも変わったと思います。内定は貰えたけど、まだ働いてる訳じゃないし、お給料だってまだ貰えてすらいないんですけど、〇さんの出した条件、クリアできてますか?
それとも、まだダメですか?ダメなら、ダメって言ってください、私、そしたら諦められるんで。」
俺「えっ…」
嫁「〇さん、好きです。〇さんにもう一回告白しようと今までずっと努力してきました。」
俺「…俺、正社員じゃないし、学歴だって、嫁ちゃんより下だよ?」
嫁「それでも、私の中での〇さんは、ずっと〇さんだから。それに、〇さんが望むなら〇さんを主夫にして私が大黒柱でも大丈夫なくらい、頑張るので。」
俺「ありがとう。嫁ちゃん。そこまで頑張った嫁ちゃんを、俺が捨てるわけにはいかないよね」
嫁「じゃあ…」
俺「うん、これからもよろしく、嫁ちゃん。」
嫁「やったぁ!」
嫁が抱きついてくる。嫁は泣いていた。
嫁「嬉しい、合格した時より、内定もらった時よりもずっと嬉しい!」
俺「うん…俺も、嬉しい」
嫁「あ、でも、〇さん仕返しされるって思ってたんですよね?じゃあ仕返し!」と再び手刀が俺の頭を直撃する。
嫁はさっきの泣き顔が嘘のように笑って、じゃあ食べましょうか、と言って二人で食事をした。四月になり、嫁が新社会人になったら、俺も派遣先で正社員として働くことになった。
嫁からは就職祝いとして、キスと初めてをプレゼントされた。
子供はまだいないけど、夢の中で女の子が出てきたから女の子かもしれん。
もうすぐクリスマスなので、嫁に子供のことを相談しようかと考えてる。
滅茶滅茶長いな!すまん。
紫煙みんなありがとな。