これは10年ほど前のお話。
全然ハッピーエンドじゃないので悲しいお話が嫌いな人はスルー推奨です。
大筋は実話ですが、会話に関しては私自身が体験したことじゃないことも多いのでその部分は創作になります。
登場人物
俺(ゆうすけ)
フツメン
背高い
サヤカのことを小学校の頃から好きだがなかなか言い出せずにいる。
サヤカ
アイドル事務所にスカウトされるほどの美少女
時期はモー娘、アクターズなどの全盛期
背ちっこい 多分Cかっぷぐらい
俺とサヤカの地元はお世辞にも都会とは言えない海沿いの小さな町だった。
話は小学校6年生のころまで遡る。
サヤカは当時から相当な美少女で同学年の男子からもモテモテだった。
俺が記憶しているだけで5人から告白されるほどだ。
だがサヤカは全て断っていた。
俺はというと、俺もサヤカが好きだったが告白することで毎日一緒に帰る間柄が壊れてしまうのが怖くて言い出せなかった。
しかし女子には異常なくらい嫌われていた。
まぁありがちな話だと思う。
可愛い女の子への嫉妬心ってやつだ。
だからサヤカには女友達がほとんどと言っていいぐらいいなかった。
だから俺といつも一緒だった。
家が近いというのもあったが、昔から町内会の行事なんかも全部一緒だったし、毎日一緒に通学、遊ぶ時は大体二人で遊んでいた。
サヤカの家はお父さんが早くに亡くなって、お母さんと二人で暮らしていたんだけど2年前ぐらいにお母さんは5個ぐらい下の男の人と再婚したって聞いた。
サヤカの義理のお父さんはタクシーの運転手で平日の昼間家にいることもあった。
ある時期からサヤカは頻繁に帰り道に寄り道しようって言ってきた。
俺はあんまり遅く帰るとかーちゃんに怒られるので気乗りはしなかったがサヤカがへそを曲げると面倒なことを知っていたので渋々つきあっていた。
「ねぇ。今日ゆうすけの家に泊まりたい」
「はぁ?そんなの無理に決まってっぺ!テツヤたちに女子を家に泊めたなんて知られたらなんて言われっかわかんねーし。何よりかーちゃんがダメっていうべ」
「………もういいっ」
そういうとサヤカは走って行ってしまった
「あ、おいっ!…ったく」
ただ事じゃなさそうだなって思った。
家に帰ってかーちゃんにサヤカを泊めてもいいか聞いて見ることにした。
「かーちゃん。サヤカがうちに泊まりたいっていってんだけどダメだよな。」
「あらぁ久しぶりにいいんじゃないの?」
「だよな、聞いて見ただk……っていいんかい!!」
「だって私さやかちゃんみたいな娘欲しかったものぉ。さやかちゃんの親御さんがいいってんならうちは大歓迎よ」
なんとも奔放な親だ。
とりあえず許可がおりたのでサヤカを迎えにいってやることにした。
ピンポーン
「はい」
お父さんだ。
「あ、ゆうすけっていいますけどサヤカちゃんいますか?」
「ちょっと待ってね……」
しばらくするとサヤカは左の頬あたりを赤くして出てきた。
「おう。どうした?そのほっぺ」
「別に。転んだだけ。どうしたの?」
「あ?あぁ。なんかかーちゃんが泊まりにきてもいいってよ」
「本当にっ!?」
すっげー嬉しそうだった。
「おじ……お父さんに言ってくる!!」
そういうと家の中に戻って行った。
10分後。
サヤカは涙目になりながら出てきた。
「いこっ」
「え?大丈夫だったの?」
「いいの!急いで!!」
俺の手をとって早足で俺の家まで向かった。
俺の手をとって早足で俺の家まで向かった。
家につくと早速かーちゃんが出迎えた。
「あらぁサヤカちゃん久しぶりだごとぉ!また一段と可愛くなったんじゃない?」
「おばさんお久しぶりです。今日は突然すみません。」
「なぁんもいいのよぉ。自分の家だと思ってくつろいで行ってね」
「はい!ありがとうございます」
出来た子だったなぁと今思い出しても思う。
その晩はかーちゃんがサヤカにベッタリで俺は全然話せなかったので一人でスーファミでドラクエ5のレベルあげをしていた。
「じゃあサヤカちゃん空いてる部屋に布団敷いてあげっからね」
あ、俺の部屋じゃないんだ。
まぁ当たり前かww
「あ、ありがとうございます」
そしてみんなが寝静まった頃
コンコン
俺の部屋のドアがノックされた
to be contenued
ガチャ
「ゆーすけ起きてる…?」
「んあ…なに?」
なに?じゃねーよ当時の俺
「なんか寂しくなっちゃったから遊びに来て見たw」
「なんか漫画かしてやろうか?ラッキーマンとかおもせーぞ」
「いやw漫画はいいかな」
「…そう?」
「今日はありがとね。私あんまり家にいたくないんだ。」
「………そうなの?」
「うん。新しいお父さんね。なんか気に入らないことあるとすぐ暴力振るってくるの。」
そういって俺にお腹のあたりを捲って見せてきた。
「うわ、アザ…」
「毎日怖くてさ、、今日お母さんが会社の旅行で夜いないから本当に家にいたくなかったんだ。」
「そっか。早く言えばいいのに…。俺が明日サヤカのとーちゃんにヤメろって言ってやっから!」
「いや、いいよ。お母さんに心配かけたくないし…。」
「でも…」
「私がちょっと我慢すればいいだけだから」
この時サヤカのことを助けてあげれていたら後々の運命は変わっていたのかもしれない。
「ねぇ。ちゅうしたことある?」
「ば、ばか!あるわけねーべ!!」
「してみよっか?」
「」
「なーんて冗談ww初めては好きな人とって決めてるもんねーだっ」
「お前からかうなよー!!」
「きゃー!あはは!」
ドタバタしてたらかーちゃんが起きたらしくこっぴどく叱られた。
仲が良いまま俺たちは小学校を卒業した。
小学校編終わり
68: 名も無き被検体774号+ 投稿日:2013/04/09(火) 02:21:27.48 ID:7yKr5nIG0
中学校にあがるとサヤカはより一段と可愛くなっていた。
なんか中学生になると一緒にいることが恥ずかしいってのもあったが、先輩たちに目をつけられそうでサヤカと距離をおくようになっていた。
サヤカはやはり先輩たちにも人気で、よく不良っぽい先輩にちょっかい出されていた。
サヤカは一人でいることが多かったので半ば無理やり連れ去られていたが、俺は厨房なりたてで怖くてなにも出来なかった。
「ヒャッハー!サヤカちゃん遊ぼうよぉぉぉぉぉ!!」
「え、と。。困ります。」
「いいからいいから楽しいことして遊ぼうぜぇぇぇぇぇ」
「おい、オメーラ!」
!?
現れたのはうちの中学校の番長のリュウジさん。
ここらへんの中学校で彼に逆らうものはいない。
「よってたかって下級生にすっかけてんじゃねぇよ」
「すませんっす………ウッ」
サヤカに絡んでた不良たち一人一人にボディブローかましていた。
「あーえっとサヤカちゃんだっけ?わりーな。こいつらにちゃんと言っとくから、次こういうことされたら俺にいえよ。」
「は、はい。ありがとございます」
サヤカ!目がハートになってる!!!
遠巻きで見守る俺。
…マジでチキン
サヤカは中学校に入るとクラシックバレエを始めた。
どうやらかなり素質があったらしく学校そっちのけで練習に励むようになっていった
サヤカは中学校に入るとクラシックバレエを始めた。
どうやらかなり素質があったらしく学校そっちのけで練習に励むようになっていった。
一回見にきてって言われたけど行かなかったな。
サヤカは学校にまったく来なくなった。
バレエをしていない時はリュウジさんたちと遊んでいるようだった。
直接は聞かなかったけど付き合っていたらしい。
可愛い女の子に限っておっかない先輩の女になってたりすんだよなぁ。
ほんとありがち。
ある日。
学校でリュウジさんが荒れに荒れていた。
「あの野郎!!マジでぶっ頃す!!!」
学校の備品や壁を蹴りまくっては壊す壊すww
学校にいる人全員が怯えまくっていた。
どうやらリュウジさんの彼女であるサヤカがリュウジさんの一個上の先輩にレイプされたのだと言う。
しかもそれが初めてはだったということでリュウジさんも我を忘れるくらい怒り狂っていた。
その抗争の部分は俺はチキンだったためよくわからないが、リュウジさんは顔面がわからないぐらい殴られたうえ、停学。
相手も相当ボッコボコにされたという噂だ。
俺はなんか蚊帳の外キャラになってるけど、内心はかなり怒りを覚えていた。
全く学校に来ないサヤカが心配だったということもあり、俺はサヤカの家に行ってみることにした
ピンポーン
「はい」
サヤカの声だ
「おう、俺。ゆーすけ」
「…なに?突然?」
「いや、たまには学校にこねーのかなぁと思ってさ」
「………あんたに関係ないでしょ」
「まぁ……でも俺もお前いないとなんだかんだ寂しいからさ」
「会いたくない」
「そっか。まぁまた来るわ」
そういって振り返り帰ろうとするとそこにはリュウジさんが。
あ、俺おわた。ぜってーぶん殴られる。。。
ずんずんとこっちへ近寄ってくるリュウジさん
「おい!」
「は、はひぃ!」
「お前なんなんだよ!?」
「え、えーとですね、、あのぉ小学校からサヤカさんとお友達をさせていただいておりまして」
「…………そっか。心配して来てくれたんか」
「まぁそのような感じです、はい。」
「俺もさぁ、サヤカには出てきて欲しいんだけど全然出てきてくれねーんだ…」
普段大きく見えるリュウジさんがなんだか小さく見えた。
「そのうち必ず出てきますよ。リュウジさんもサヤカのこと支えてやってくださいね」
「ば、バカヤロウ!当たり前だ!おめーもダチなんだからたまには気にかけてやってくれよ。」
「はい。もちろんです」
結局中学校一年の頃にサヤカが学校に出てくることはなかった。
リュウジさんともいつのまにか終わっていたようである。
俺はというと週1くらいはサヤカにプリントを届けるっていう名目で会いに行っていた。
まぁ行っても五回に一回ぐらいしか会ってもらえなかったがw
結局サヤカがいないまま中学時代は終わってしまった。
俺は普通に高校受験をして普通に高校に進学することになった。
この頃になるとサヤカは綺麗に着飾って少し離れた繁華街へと足を運ぶようになっていた。
一時期の完全シャットアウトではなく、会えば普通に話すような関係性になれた。
ただ口癖がウザい!マジでうっとおしいんだけど!になっていた。
そんなにうっとおしかったか俺?
高校受験が終わった頃、珍しくサヤカから連絡がきた
「おう、珍しいな」
「たまにはね。そういえば高校受かったらしいね。おめでと」
「あーありがと」
「私さぁ……」
「ん?なになに?」
「やっぱなんでもない。」
「おいwwここまできてそれねーべ!」
「むぅ…。私芸能事務所からスカウトされた。」
「えええええええ!まじ!?すげえじゃん!!!なに?モー娘?」
「違うよwwなんかご当地アイドルっていうのかな?そんな感じ」
「それでもすげーよ。で?やるの?」
「ゆうすけはどう思う?」
本当はアイドルなんかなったらサヤカがもっと遠くに行ってしまうような気がしていたからやって欲しくなかった。
「いいじゃん!サヤカが有名になったら俺もうれしーぞ」
「そっかぁ。うーん。じゃあやってみよっかな。」
こうして俺は普通の高校生に、サヤカはアイドルに。
あの時止めていたらって今でも思う。
明日につづく
また明日。
サヤカは芸能事務所に来ていた。
この芸能事務所は俺たちが住む町から電車で40分ほど走った少し大きな街にあった。
サヤカの他に16歳の女の子が二人と17歳の女の子が一人集められていた。
サヤカと同じようにスカウトされた女の子達である。
この日はこれからの活動に関して説明などをされた。
「ふぅ、、思った以上に大変かも…」
「サヤカちゃんだよね?」
話しかけてきたのは東京でも苦楽を共にすることになるアヤだった。
「あっ、うん。」
「サヤカちゃん本当に可愛いよねぇ」
「いやいや、そんなことないよ。」
「私はアヤっていうの。よろしくね」
アヤはグループのリーダーであり、同時に一番人気のあるメンバーだった。
「色々大変だけどお互いがんばろっ」
「う、うん」
一方……
俺は高校の入学式に参加していた。
まぁ特に面白いことはないんだが、
普通の高校生で
普通に勉強して
普通に部活して
普通に遊んでいた。
もうありきたりすぎる高校生活だった。
体育祭だかの打ち上げの時
「うぇーいwwwww」
「おつかれぇーいwwwww」
カラオケでみんなで盛り上がろうなんつって男女20人ぐらいで集まった。
「好きな人発表会ー!!wwwww」
「うぇーいwwwww」
「えーwwwwちょっとwwwwやだーwwww」
なんだかワーワーキャーキャー盛り上がってる皆を見ていたらサヤカのことを考えてしまっていた。
サヤカはこういう大人数の集まりってしたことないだろうなって。
サヤカもこういう輪にはいるような普通の女の子になればよかったのにって思った。
「次ゆうすけーwwwww」
「…………」
「おいwww」
「ん!あぁごめん!好きな人はー飯田香織でーす。」
「なんでジョンソンwwww」
高校生ってノンアルコールなのになんであそこまでテンションを高められるのか、、
まぁ俺の話はいいや。
この日、なんとなくサヤカに会いたいって思った。
帰り道電話してみることにした
プルルルル
「はーい」
「よっ!どうだ最近」
「毎日疲れるよー。まだお客さんの前に出たりはしないんだけどね。」
「そっかぁ。」
「でも最近楽しくなっときたからがんばってみよっかな。」
「ゆうすけはどうなの?」
「んー?うぇーいwwww好きな人発表会wwwwとかやってきた」
「は?wwなにそれwww」
「なんかそういう遊びなんだろうね」
「なんか楽しそうwwで?ゆうすけも発表したの?」
「したよ。」
「えっ。ゆうすけ好きな人いたんだ?だれだれー?」
ここでお前だよって言えばなにかかわったのかな?
「…飯田香織」
「なんでジョンソンwwww」
サヤカと話してるとやっぱり楽しかった。こんな日が沢山続けばよかったのに。
時は過ぎて高校1年も終わりに近づいていた。
サヤカは地元のアイドルとしてイベントやローカルのテレビなんかにもチョコチョコでるようになっていた。
とは言え本当にちょっとした番組のアシスタントみたいなものである。
それが嬉しくもあり、同時に寂しさも感じていた。
少しずつサヤカは遠い存在になってしまっている気がしていたんだ。
年明け。
初詣も終わって飼っていた犬の散歩をしていると突然俺を呼ぶ声がした。
「ゆうすけー!」
「ん?おー!サヤカ!久しぶりだな」
すっかりオシャレになっていてやっぱり同学年の女たちとは雰囲気がちがった。
「うん。久々だねー。散歩?」
「ん?ああそうそう。」
「あはっ。ベル君大きくなったねー」
ハッハッ
「ねぇゆうすけ。私が東京に行くって言ったらどうする?」
「東京?一人でか?」
「んーん。アヤと二人」
「いいんじゃねーの?更に活躍できるかもしれないんだろ?そんなチャンス逃すわけにはいかねーべ」
「そっか…。そうだよね!このままここにいても何にもかわらないしね」
「……あぁ。サヤカならきっと人気のアイドルになれるさ」
「うん…。まぁ6月だからまだ先の話なんだけどね。」
「あ、有名になったら後藤真希のサイン頼むわ!」
「うざいwww」
「さ、そろそろいかねーと」
「あ、うん。…あ。ゆうすけ!」
「なにー?」
「…………東京行ってもたまには連絡しなさいよね!」
「とーぜん。」
なんとなくだけどサヤカは浮かない表情だったような気がする。
6月。
いよいよサヤカは東京に行くことになった。
新幹線の時間を聞いていたので俺はサヤカを駅まで見送りにいくことにした。
「サヤカー!」
「え?ゆうすけ!学校は?」
「お腹痛いから遅刻することにしたwww」
「見送りに来てくれたの?」
「まぁそんなところだ。」
「あ、そうだゆうす」
「おわーアヤちゃん!!相変わらず綺麗だねー」
「ふふっありがと~。」
「…………」
サヤカからの突き刺さるような視線
「うっ…。さ、サヤカ一緒に写真撮ろうよ」
「は?やだよ。なんでゆうすけと撮んなくちゃいけないの?」
「まぁいいじゃん!今まで撮ったことなんてなかったしさ。」
「あ、じゃあ、私が撮ってあげる」
「おわー!アヤちゃんサンキュー」
「………」
「二人とももっと寄ってー。サヤカもっと笑顔でwwゆうすけくんはそれ以上はやりすぎだから笑わなくていいよww」
「…ばかゆうすけ」
「撮るよ~はいチーズ!」
パシャリ
サヤカ。君が不機嫌だった理由、本当はちょっと気付いてたんだ。けど、君の言葉を聞いてしまったら笑顔で送り出せない気がしたから逃げてしまった。
ごめんな。
東京。
サヤカとアヤはとある芸能プロダクションに移籍という形でタレントとして活動していくことになった。
二人で寮というか賃貸アパートというか、ルームシェアをしてくことになったのである。
初めは二人ともタレント活動は順調だった。
イベントが中心だったが、それなりに仕事ももらえた。
けどその稼ぎだけじゃどうやっても生活していくのは困難だった。
『あー今月もやばい…このままじゃ服も買えないよ…』
「本当だよね。。なんかいい仕事ないかな?」
『アヤこれ見て!』
時給2000円以上保証日払い可
「キャバクラってやつだよね?事務所には言えない…でしょ」
『話だけ聞きに行ってみない?』
こうして二人は面接を受けに行くことにした。
アヤはすでに18歳になっていたが、サヤカはまだ16歳だった。
店側も未成年を雇うのはまずいっていいながら敬遠してたものの、二人ともスカウトを通さず来てくれた上玉だったため、手放すのはもったいないってことで雇ってもらうことが出来た。
何かあった時のために偽の保険証も渡された
『なんとか受かったねww』
「本当に大丈夫かなぁ…」
さっそく一日体験ってことで二人は働くことになった。
「おーなになに?新人??二人とも可愛いねー!」
『ありがとうございまぁす(ニコニコ)』
先輩からは今日は座ってニコニコしながら相槌打ってれば大丈夫とのことだったので二人はそれに徹した。
「サヤカちゃんレギュラーになりなよ!俺そしたらめちゃくちゃ遊びにくるわ!」
『ありがとございまぁす(ニコニコ)』
着く客着く客みんな口を揃えてこう言った。
仕事を終えるとさっそく店長がすり寄ってきた。
「二人ともお疲れ様!!!いやーやっぱ僕の目は間違ってなかったよ。お客様たちみーんな二人を大絶賛!!時給このくらいあげるからさ、、ぜひうちで働いてよ!ねっ!!」
サヤカとアヤは顔を見合わせた。
二人で同時に「はい!」って返事をした。
ここから夜の世界に染まるまではそんなに時間がかからなかった。
レギュラーで働き出してからは東京の色んな顔を見ることができた。
今まで食べたことのないような美味しいものを食べることができたり、自分では買えないようなプレゼントを貰ったり、ある会社の社長から愛人にならないかって申し出まであった。
サヤカもアヤも事務所に遅れて行くことが多くなった。
朝早い現場なんかではお酒の匂いを漂わせたまま行くこともあった。
事務所は二人に厳重注意をしたが、改善はされずもはや解雇するしかないところまで来ていた。
ー地元
「サヤカしっかり頑張ってかなー」
俺はサヤカの邪魔になったら悪いと思ってあまり連絡をしていなかった。
…まぁ本当は心配で仕方なくて連絡しまくった末「ウザい」の一言でバッサリ切られたんだがww
「たまには連絡してもいいだろ。」
pururururu
「はい」
「よぉ。元気にしてたか?」
「うん。なに?」
「いや、芸能活動の方はどうかなって思ってさ」
「別に…。普通だよ」
「そっかそっか。たまにはさこっちにも帰って来いよな」
「気が向いたらね。忙しいから切る」
「お、おう。頑張れよ」
なんかサヤカは違う人間になっちゃったみたいに感じた。
結局サヤカもアヤも事務所をクビになった。
夢を抱えてやってきた少女たちは1年とちょっとで欲望の街に飲み込まれてしまったのだ。
「ホスト行ってみない?」
アヤもすっかり夜にそまっていた
「えー別に私はそんなに興味ないかなぁ」
「ようは試しじゃん。堂本光一みたいな人いるかもよw」
「うーん。んまぁ一回だけなら…いってみよっか。」
二人は仕事が終わった後イケメンが多いと噂のホストクラブへと足を運んだ。
俺にはホストの内情のことよくわからない。
ただサヤカはここで出会ったホストのシンヤに人生をめちゃくちゃにされてしまった。
サヤカは実は男と付き合った経験が少なかった。
俺が知らなかっただけかもしれないがww
サヤカとアヤはすっかりホストにハマってしまった。
指名しているシンヤの誕生日が近づいたある日
「サヤ、、俺今回のイベントまじ何としても失敗するわけにいかねーんだよね。。なんとかルイ、バカラ(高いお酒)クラス入れられない?」
「えー。流石にキツイよ」
「マジ頼むっ」
サヤカにとってシンヤは東京の癒しだった。
アヤも心の支えのひとりだったが、アヤも別のホストに相当入れ込んでおり、二人揃って感覚が麻痺していたのかもしれない。
「わかった…。なんとかしてみるよ」
着信履歴には不在着信で「ゆうすけ」と何件も残っていた。
そしてアヤが選択したのは風俗という道だった。
一日50000円ほど稼げたので、シンヤの誕生日には60万ほど準備ができたのだった。
そして誕生日の日
「サヤまじでありがとう…」
そう言ってシンヤはサヤの手を握った。
「えへへ。おめでとうシンヤ」
「今日終わったあと空いてる?お礼したいんだ」
「うん。いいよー」
この日からサヤカはシンヤの本カノってやつになった。
よくわからんが、ホストには色カノと本カノっていうのがあるらしい。
もうサヤカは後戻りできないところまで来ていた。
ここから堕ちていくのが胸が痛いなぁ…
支援
ここからはわかりやすい絵に書いたような転落だった。
アヤとのルームシェアをしていた部屋は二人とも戻ってくることはなくなってしまった。
アヤはしばらくすると消息が不明になってしまい、売掛金(店への借金)がどうとかで指名されてたホストはえらい目にあったらしい。
サヤカはシンヤと住むようになった。
付き合うとシンヤは束縛が強く半ば強制的に腰のあたりにタトゥーを入れられた。
そのタトゥーにはなんかの意味が込められてたって聞いたけど忘れてしまった。
シンヤは薬の常習犯でキメセクってのにハマっていたらしくサヤカもそれを強要されていた。
なんでそんなことになってしまったんだろうか、、この頃は全く連絡が取れなかった時期なので詳細はわからない、ただ後から受け取るサヤカから手紙では後悔しかないと書かれていた。
そんなある日
シンヤが真っ青な顔をして帰ってきた
「どうしたの?」
「ヤバイヤバイヤバイ…………」
「だからどうしたのってば」
「つけちゃいけない金に手つけた…。俺、消されるかもしれない…。」
「い、いくらなの?」
「500万…」
「サヤカ何とかなんねー?まじで頼むよ。俺消されちまうよ…」
「そんなこと言ったって…」
「そうだ、サヤカAVとかどうだ?AVなら一本で50ー80万ぐらいにはなる!」
「え、ちょっとなにいってんの?」
「本当に頼む!!これが片付いたら俺たち結婚しよう!」
「……」
「ダメか…?」
「いいよ」
「マジかよ!?サヤカまじで愛してる!!」
こうしてサヤカはAVに売られた。
お金はシンヤの口座に振り込まれる契約だった。
何本かのAVに出演した基本は素人ものだったらしい。
俺はサヤカが出た作品は見たくないし、探す気もない。
もし見つけたら全部買い占めて燃やしてやりたいくらいだ。
最後のAVを取り終わってシンヤと同棲している部屋に戻ると、シンヤはもういなかった。
書き置きも何もないまま荷物がすっかり消えてしまっていた。
サヤカは絶句した。
あんな軽い感じだったけどいいところもあったらしい。
サヤカは東京を去ることを決意した。
20歳
サヤカは海沿いの小さな町に帰ってきた。
母親は虐待をしていた父親と離婚していた。
また二人で暮らすことになったんだ。
実家に戻って数日経ったある日
聞き覚えのある声がした
「サヤカ?」
「…」
「やっぱりサヤカだ!帰ってきてたんだな」
「ゆうすけ…」
「どうした?全然連絡取れないから心配したぞー!帰ってきてたなら連絡しろっていってたじゃんかー」
「もう私に関わらないで…」
「は?おい!サヤカ!?」
「うっとおしいって言ってんだよ!!!!」
今まで聞いたことないくらい大きな声でサヤカは叫んだ。
「え。。」
「あんたは私のなんなの!?人の気持ちも知らないでバッカじゃない!いつもいつも私にまとわりついてきて気持ち悪いんだよ!!あんたなんかしんじゃえばいいのよ!!!」
そういうとワンワンと泣き出してしまった。
俺は言葉が出なかった。
よくわからないけど、俺はサヤカを抱きしめていた。
「ばか…ばか…」
この時東京で何があったのか俺はわからなかったが色々辛いことがあったんだろうと思った。
俺はサヤカを落ち着かせて家へと送って行った。
俺はこの時地元の大学に通う学生でそれなりに時間があった。
サヤカもこっちにきてからは仕事をせず、時間があった。
だからってのはなんか変かもしれないけど、二人でいることが長くなった。
こんなに長くいるのは小学校以来だった。
「ゆうすけは変わらないね…。」
「そっか?背伸びたんだけどw」
「私は汚れすぎちゃった。」
「んー。じゃあ洗えばいいよw」
「はぁ?w」
「靴だって服だって汚れたら洗うだろ?自分自身だって洗っちゃえばいいんだよw」
「バカじゃないのwww」
「まだまだ人生これからだろー。サヤカは昔からなんでも器用にこなすし大丈夫大丈夫!」
「ほんと呑気wwま、そこがゆうすけのいいところかw」
めちゃくちゃな言い分だったけど、さやかに少し笑顔が戻った気がした
一緒にいたけどやっぱり彼氏彼女の関係にはならなかった。
俺もサヤカもお互いを好きだったとは思うんだが、幼馴染効果なのかなんなのか恋人にはならなかった。
サヤカが地元に帰ってきて数ヶ月たったある日
サヤカは体調を崩した。
高熱でうなされて凄く苦しそうだったんだ。
本人はただの風邪でしょっていってたけど内情は違かった。
ヒト免疫不全症候群
エイズだった。
だれからうつされたかはわからない。
これまでの無理が祟ったんだな。
この時はエイズだなんて思わなくて病院なんか行かなかったんだ
2年後。
俺は大学を卒業が間近で就職も決まった。
サヤカは体調を崩した後からいつも体調が悪そうだったが、色んなアルバイトで自分の生活費を支えていた。
春がくるちょっと前。
時期は3月初旬。
サヤカはまた体調を崩し、入院することになった。
この日サヤカには医師から衝撃的な事実を突きつけられた。
エイズに感染しており、カリニ肺炎を発症している、と。
投薬をすればすぐに死んでしまうことはないはずでしたが、色々な合併症があったらしくサヤカはそのまま亡くなってしまいました。
自分がそれを知ったのは亡くなったことをサヤカのお母さんから聞いた時。
もはや何も言葉が出なく涙だけがとめどなく溢れてきました。
サヤカと最期に会ったときは普通だったのに急にこの世から去ってしまいました。
身内だけの葬儀が終わり、俺はサヤカのおかあさんに呼び出されました。
「ゆうすけくん。ひさしぶりね。娘がいつも迷惑かけちゃって申し訳なかったわね」
「いえ…」
「サヤカの部屋を整理してたらね、あなた宛の手紙が出てきたの。もしよかったら読んであげてちょうだい」
「は、はぁ」
「サヤカね、あなたが幼なじみで本当によかったと思ってたはずよ。私からもお礼を言うわ。ありがとう」
「こちらこそ、、ありがとうございます」
ゆうすけへ
こんな手紙を書くのは本当は嫌なんだけどゆうすけには知ってて欲しいから書くね。
(続きには東京での出来事が書かれていた。)
私ね、東京から帰ってきた時本当は自分で死んじゃおうと思ってたの。
けどゆうすけに会って感情爆発させてwwそして抱き締められた時、もう少し生きてみようかなって思ったの。ゆうすけと生きてみたいって思った。
でもね、最近自分はそんなに長くないんじゃないかなぁって思ってるんだ。
だからもし私になんかあったときのためにこの手紙を書いとくことにしたの。
だから、、いつもは言えないけど…迷惑ばかりかけてごめんね。大好きだよ。ありがとう。
サヤカより
そしてすこしはしっこが折れ曲がった一枚の写真が出てきた。
あのとき無理矢理とった写真だ。
不機嫌そうなサヤカとはちきれんばかりの笑顔の俺。
それを見て涙が止まらなくなってしまった。
なんで好きと言えなかったんだろう。どうして行くなと言えなかったんだろう。
後悔の嵐だった。
サヤカと写っている唯一の写真。
俺は自分の部屋に飾ることにした。
写真に写っている不機嫌そうな君はもう俺のところに帰ってこないけど、もう一度会えたら俺も大好きだったと伝えたい。
数年後
俺は社会人になってから出会った女性と結婚して子供も授かった。
だけど春が来るたびサヤカのことを思い出す。
そして君の「うっとおしい」を聞きたくなる。
おわり
おつかれ
胸が苦しいな‥
賛否両論あるかと思いますが、自分的には書けてよかったです。
はじめてこういうのを書いたのでなかなか下手くそでしたが当時を思い出して書けていろいろな感情が沸き上がりました。
読んでくださった方々、支援してくださった方々ほんとうにありがとうございました。
おつかれさま
こういうこと聞くのはあれだけど、
節目節目のどこかで自分が救い出せたんじゃないか?みたいな後悔があるの?
そういう理由で書くことにしたのかなぁと思ったりしたんだけれども
>>121と似たような感想をもった。
時計の針を戻せるならどこまでだろう。
酷な質問なのでスルーしてくれて構わない。
彼女の冥福を祈ります。
そうですね。
自分がサヤカの運命を左右できる場面は何回かあったと思います。
その際正しい選択が出来ていればと思うときもあります。
まぁ全てが過ぎてしまったことなので今更どうしようもないんですが。
年月を経てそこらへんは整理することができたと思います。
彼女は自分がAIDSって知らずに逝ったのか?
発祥して長く苦しまずに亡くなったのは、
こんなこと言ってはいけないかもしれないけど不幸中の幸いだったんではないかなぁ
エイズって知った上でなくなったはずです。
入院したときに母親と一緒に聞いたそうです。
二年間のあいだにエイズの症状は出てたんだと思います。
多分ですが告げられる前に自分で勘づいていたんじゃないかなぁと今はおもいます。