入社して1ヵ月ですでに職場を乗っ取る勢い
人間的にも敵わない逸材が入ってきた
すでに社長に気に入られまくってて飲みに連れてってもらったりしてるらしい
やばい
あと何やってる会社で新人君の部署は何？
とりあえずスペック
俺のことはどうでもいいよな
新人
早稲田出身
顔は生田斗真とにオリラジ藤森を足して2で割った顔
身長は175くらいあるかな
もうこの時点で俺完全に負けてる
あんまりいうと特定されそうだから伏せるけど
新人はある機械の営業してる
俺はその部署の先輩
4月に入社した新人、俺はそいつの教育係に任命された
うちの職場は、入所して最初の2週間は同期全員が集まって集団研修的なことをやるんだ
だから正確にはうちの部署に配属されたのは4月の中旬のこと
まず第一印象は、とんでもなく真面目そうな典型的な草食系男子
新人「俺さん、これからお世話になります新人です！よろしくお願いします！」
見た目とは裏腹にはきはきした奴だった
同期で営業は新人だけ。
同期は全部で5人でみなバラバラな部署らしかった
うちは仕事上他部署との交流はほとんどなく、はっきりいって実力社会的な面が多かった。
まあこの新人がなかなか切れ者で、教えたことをスポンジのように吸収していくやつだった
俺もこのときは、「今年の新人はあたりかもな」くらいにしか思ってなかった
うちの仕事は、朝8：00から夕方17：30までが定時だけど基本的に定時にあがるやつはいない
サービス残業といえばその通りで、いわゆるブラックだ
一番厄介なのが部長で、パワハラみたいなことを平気でやるような人だった
定時5分前くらいに「これ明日中によろしく」みたいな感じで、自分はさっさと家に帰る
さすがに新人にはそんな負担はさせないだろうと思っていたら、「おい新人、この書類をすぐにまとめとけ」と当たり前のように仕事を押し付けだした
俺「部長、まだ部署にきて1週間ちょっとの新人には辛いんじゃないでしょうか」
部長「新人だろうが関係ない、お前が教えながらやればいいだろう」
新人「・・・」
もちろん教育担当の俺がしっかり指導しながら進めていくのが当然なんだろうけど、なにしろ入ったばかりの新人
自分が営業でお伝えしなければならない機械装置の知識すらまともにない状態だ
いくらOJTとはいえ、さすがに酷だろうと思った俺は新人のぶんの仕事も同時進行で進めることにした
この時点で4月の終わり
このころの新人は機械の取り扱いはもちろんのこと、電話もまだひとりで取らせたこともなかった
ある日、朝出勤したら新人は自分のデスクで営業の本やらうちの機械の仕組みやらたくさんの書類を広げて寝息をたてていた。
俺は電車通勤のせいもあり、7：00ちょいすぎには出勤している
つまりこの新人は仕事が始まる1時間以上も前から職場にきていることになる
このときは、こいつどんだけ真面目君だよと思ったが、この出勤の早さは今でも続いてる
羨ましい
出社前の時間にデスク座ってなんかやるってまともな会社なら許されないからな
ブラックって書いてあるがな
人間ってやっぱり心のどこかで努力をしていることを他人に知っていてもらいたいってのはあると思う
俺だって恥ずかしながら人前ではいっちょ前に点数稼ぎみたいな真似をしていたこともあった
でもこの新人だけは違っていた
新人くんは絶対に自分が努力しているところを人に見せようとはしなかった
仕事終わ
俺「さて、そろそろ帰るか」
新人「あ、俺さんおつかれさまです」
俺「お前は帰らないの？」
新人「すぐ帰りますよ！」
俺「そうか、じゃあお先に」
こんなやりとりも何度もあったが、どうやら新人くんは俺が帰ってしばらくしても家に帰らず、もくもくとデスクで教えてもらったことを別のノートに書きなおしているらしかった
わかりやすく言えば、新人君はバカがつくほどの真面目で、それでいて超ストイックだった
そうだようちはブラックだよ
出勤時間とか定時とか関係ないんだよ
毎日遅くまで残って作業をし、1時間も2時間も早く出社して仕事を勉強し・・・
新人は社畜の才能に溢れていた
ここまで勉強していれば周りの反応も「こいつやべーな」みたいな感じになり始め、見えないところで新人の株は急上昇
みなあまり直接新人と会話しないものの、喫煙所なんかで同僚たちが集まると自然と新人君の話題になっていた。
部署に配属されて2週間ちょいが過ぎたあたりで、新人はめきめきと成長を遂げ、営業で大事なポイントや仕事の手順を頭に叩き込んでおり、1説明すれば5か6くらいまで理解してくれる驚異の順応力だった
向上心があるのはいいことだけど、ずっと今のままじゃ疲れてくる。
そうなってきたときに行き詰ると、ストイックすぎるのが仇となって自分を責めすぎて欝になったり
燃え尽きて途中からペースダウンして常人未満になったりすることもある。
まあ新人君がそうなってきたらサポートして、常に目標を見失わないようにたすけたげるといいかもよ。
まさにその通りで、この伸びしろのでかさは半端ないが、逆にいろいろと恐ろしいのよ
新人の恐ろしさはこんなもんじゃなかった
まさに切れ者のイケメン新人は、この社畜センスあふれる自己研鑽真面目くんに加え、もうひとつ突出した才能があった
それは圧倒的なコミュ力の高さだった
この間のGW、うちは出勤OKというわけのわからないOKサインが出されており、実質それは「GWなんかで休んでるんじゃねーぞ」という無言の出勤命令だった
当然、新人くんはなんのためらいもなく元気に出勤してきた
GWの仕事といえど、やることはたくさんある
その仕事ひとつひとつを説明しながら、新人は確実にレベルをあげていった
そして驚くことに、新人は愚痴ひとつ溢さない
ふつう人間は生きていれば何かしらストレスは溜まるし、愚痴を吐きたくなるものだ
もしかして新人くんは愚痴や鬱憤なんかをため込んでるのではないか？
そう思った俺は、新人を飲みに誘うことにした
社長が直々に飲みに連れて行くわ
乗っ取られるぐらい小さい会社だわ
そのくせ若い教育係だとか
もう少し設定ねろよ
正直うちの会社はでかくない
だからなんで早稲田のこいつが入ってきたのか最初は不思議だった
それに俺がいつ若いなんていったんだ
俺来年で30だぞ
よくゆとり世代は酒を飲まないやら、飲みの誘いを断るやらって言われてるが新人は普通に「行きます！」と喜んでついてきた
うれしくなった俺は一軒めの居酒屋とキャバクラに連れて行った
ここで、新人の恐ろしいコミュ力が発揮される
日ごろから人間観察でもしているのか、新人はキャバの話し方や仕草から彼女たちの性格を探りあて、うまい具合に自分自身をキャバの理想の人間に作り上げた
文章力がないせいでうまく伝えられないが、要するにそのキャバ嬢にあった相性の良い人になりきって会話を進めていた。
ギャル系にはチャラ男、キャバ嬢だけど悪乗りが苦手そうな人には紳士で、ノリの良い嬢には同じ温度で接して・・・
とかなり忙しそうだったが、もともと顔もイケメンなこともあり、ラインの交換を執拗に迫られていた
ちなみに俺には誰一人交換してくれなかった
お前、そんなに話すやつだったっけ？と聞いたら
「人によって変えてるんです」と答えた
この辺から、俺はなんだか新人が怖いと思い始めるようになった
これがついこの間のGWの出来事
そしてGWあけ、俺はついに新人の本当の恐ろしさを目の当たりにすることになる。
ある時、俺と新人で昼飯を食いにいこうと食堂に向かっているときだった
他部署の人1「おぉ！新人くん！」
他部署の人2「あっ、新人くんじゃん。仕事どう？」
他部署の人3「元気でやってる？」
こんな具合に、新人君は廊下や食堂であった人みんなに話しかけられていた。
なかには俺の知らないような人にまで話しかけられている
おかしい、いつの間にこんなに顔が広くなったんだ新人は・・・
この時点で、まだ入社して1か月と少し
いったいいつの間にこんなネットワークを築いていたのか
新人に聞くと、彼は笑顔で答えてくれた
どうやら新人は、俺が退社した後に同期に会いに行っていたらしい
同期はみんなバラバラで、営業は新人くんしかいない
同期に会いに行くということは、必然的に他部署に顔を出す形になる
新人君は毎日勉強しながら、時間をつくっては同期に会いに行くという名目でいろんな部署に顔をだし、いろんな人と交流をしているらしかった。
この時点で、俺はこの新人くんに疑問を抱きはじめた。
もちろん彼は超がつくほどの真面目で、礼儀は正しいし、新人にしては恐ろしいほどの勤勉っぷり。
人としては申し分ないが、新人くんが人に対して接し方を変えているところを目の当たりにしてから俺の考え方が変わってしまったのかもしれない。
誰にたいしても優しい彼だが、それが彼の本当の性格なのか、作られた人格なのかわからなくなってしまった。
新人曰く、おばちゃん社員と仲良くなるといいですよ＾＾
とのことだった。
これってやっぱりすべて計算してるんだと思う
新人くんが入社してから俺の知らないところでコツコツ勉強していたことも、努力しているところを決して人に見せていなかったところも。
すべては、人に見せないところで努力している自分の演出で、現にうちの部署の新人君に対する期待と尊敬の眼差しは日に日に増えている。
同期や他部署の人間とも上手に接して、新人くんを昇らせるステージは着々と進んでいる。
今じゃ部長や社長のお気に入りになって、今週も飲みに連れてってもらう予定らしい。
どこまでが彼の計算で、どこまでが素の彼なのかわからないけど、俺はこの新人くんに勝てる自信がないんだ
やれゆとりだやれ使えない新人だと毎日のようにスレ立っているが、できすぎる新人も恐ろしいから皆も気を付けてくれ
もちろん俺だって仕事は頑張ってるが、コミュ力とかこればっかりはセンスだからなぁ
営業やってるし、少しは自信あるんだが新人には敵いそうにない
計算でもお前にとって良い奴ならそれで良いじゃん
自分の考えの型にはめられないから恐怖と嫉妬を感じてるだけなんだから
お前がもっと自分に素直になるべき
嫉妬も少なからずあるけど、素直でかわいい新人とは少し違うわけよ
このまま行ったら確実に潰れてお荷物になって
煙たがられて退職パターン
俺が潰されそうな勢いなんだが
来年にはもう俺よりもバリバリ仕事している気がする
周り「おい、なんか言ってるぜ」「無視無視、チクられるからな」
>>1「なんだって！？僕がいつ何を告げ口したって言うんだ！？」
周り「チクリ魔>>1ー！こいつと一緒にいると何でもチクられるぜ！」
やめろ
今のうち媚売っとけ
